ハチは非常に社会性の高い生き物です。それは、ヒエラルキーや役割分担がしっかりと行われており、それぞれのハチが一つの巣の中の社会のためだけに活動をしている点からも分かります。
その不思議なほど完成されたハチの社会について、巣の中のハチの関係性やハチの種類によって変わる社会性など、詳しい部分まで見ていきましょう。
女王蜂と働きバチ
女王蜂と働きバチの絶対的な差
ハチの社会には、大きな特徴があります。それは、女王蜂が存在しており、その下に働きバチが位置するというものです。この女王蜂と働きバチは、絶対的な差があり、その差は埋まることはありません。
なぜ働きバチは女王蜂になれないのか。その理由として、一つの蜂の巣には、女王蜂は一匹しか君臨できないという暗黙のルールがあることが挙げられます。そしてこのルールから、女王蜂になるハチにしか女王蜂に成長するために欠かせないローヤルゼリーが与えられません。
仮になんらかの理由によって女王蜂が複数出てきたとしても、どちらかの女王蜂が死ぬか、もしくは新しい巣を作るために飛び立っていきます。
役割の違いとしても見ることができる
女王蜂と働きバチの差は、単純なヒエラルキーの違いではなく、役割の違いとして見ることもできるでしょう。そう考えると、ハチの役割分担の明確さが理解しやすいです。
女王蜂の役割は、なんといってもオスバチと生殖行為をして幼虫を産むことです。次の女王蜂をはじめとした子孫を残すことができるのは、基本的に女王蜂だけです。そのため、産卵に専念できるような役割となっています。
それに対して、働きバチは女王蜂の産卵や生まれた子供の育成など、全般的なサポートをする役割が与えられています。産卵をせずに、良い環境で産卵や幼虫の育成ができるように務めているのです。
ハチの種類によって社会性は違ってくるのか?
単独行動を行うハチの種類もいる
ハチというと、集団生活をするイメージがあります。しかし、ハチの種類によっては、単独行動を行うハチも居るのが事実です。
例えば、ドロバチやベッコウバチ、アナバチなどは、家族でコロニーを形成するということはなく、基本的に単独での生活をしています。ですので、世間的にイメージされているような巧妙に構成された社会的構造を有しているわけではありません。
このような単独行動を行うハチは、実はかなり多くの種類が居ます。ですので、ハチ=集団生活というわけではないのです。
生活様式自体が種類によって変わる
ハチの社会性は、大まかに分けて大集団の家族で生活をするハチと、単独で生活をするハチに分けることができます。さらに、生活様式がハチの種類によって変わってくるため、社会性も生活様式に連動して微々たる違いが出てきます。
例えば、単独で生活をするハチの種類でも、穴で生活をする物が居ると思えば、他の生物に寄生をして、その生物の社会の中でひっそりと成長するまで待つタイプのハチが居るなどです。
また、厳密にはアリもハチの一種であることから、ハチとアリを比較するとわかるように、同じ集団で生活をするハチだとしても細かな部分に違いがあるのです。
子を産まず、社会を作るハチの生態
働きバチは子供を産まない
働きバチは子供を産みません。普通、子孫を残していくためには、子供を作ることが重要であると考えられるはずです。しかし、働きバチはそれを選択しませんでした。
働きバチが子供を産ま無いのは、巣の管理や女王蜂の世話、幼虫の生育などの重要な役割が与えられているからです。この仕事を全うするために、働きバチは子供を産みません。
一部のハチにおいては、働きバチでも子供を産める種類の物もいます。しかし、その場合は無性生殖のため全て産卵能力の無いオスが生まれ、結果的には子孫を増やすことに直接繋がらないことが多いです。
自己の遺伝子を効率よく残せる
働きバチが子供を産まずにその他の働きをするのは、実は自分の遺伝子を効率よく残せるという計算の上で行われていることが、一つの仮説として考えられています。
女王蜂だけの単独のコロニーよりも、働きバチが集団で女王蜂を支えるコロニーの方が、そこで生まれる幼虫の生存率が上がります。女王蜂は働きバチの姉妹であることから、女王蜂の子孫は働きバチと同じ遺伝子も入っています。
そう考えると、女王蜂に効率の良い出産をしてもらい、それを支える形で働くことが、結果的に働きバチにとっても自分の遺伝子を後世に伝えることに繋がるのです。
まとめ
ハチの社会性は私たちが知っているようなものだけではなく、種類によって様々であることがわかりました。
また、私たちの身近な集団で暮らすハチについては、All for oneの精神で、集団で一匹の女王蜂を支える、素晴らしい仕組みの社会性になっています。
蜂をとりまく生態系については→ハチと生態系・自然環境